研究概要 |
1.カルボニル基の位置が異なるエナミドオレフィンに対するラジカル環化反応の位置選択性に関し詳細に研究を行った。ラジカル中心がカルボニル基側にある場合、一般に、exo選択的にラジカル環化反応が起こり5員環及び6員環化合物を与えた。しかし、exo型での7員環形成反応ではendo環化(8員環形成)も起こり、選択性が観測されなかった。一方、ラジカル中心がカルボニル基側にない場合、一般に、endo選択的にラジカル環化反応が起こり、6員環、7員環及び8員環形成反応が効率良く進行することがわかった。 2.6-Endo選択的ラジカル環化反応を、引き続いて起こる5-endoラジカル環化反応を含むラジカルカスケード反応に応用することにより、橋頭位にメチル基を有するphenanthroindolizidine類の合成を行った。 3.7-Endo選択的ラジカル環化反応と5-endoラジカル環化反応を組み合わせたラジカルカスケード反応を利用することにより、stemonamide及びisostemonamideの全合成を達成し、さらに、stemonamine及びisostemonamineの最初の全合成を行った。 4.N-アリル-a,a,a-トリクロロアセトアミド類が、高沸点のアミン中加熱するだけで、single electron transfer反応に基づく5-exo型ラジカル環化反応を起こして、対応する5員環タクタムを与えることを見出した。アミンとして1,4-ジメチルピペラジンを用いると特に良い結果を与えた。本反応は、一般的なラジカル反応の条件、即ち、アゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル開始剤存在下トリブチルスズを用いる条件、に代わる優れた反応条件を与えるものである。さらに、1,4-ジメチルピペラジンにジメチルスルホキシドのような共溶媒を添加すると室温でも反応が進行することがわかった。また、本反応はピロリジジンアルカロイドの合成などにも応用することができることがわかった。
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