研究概要 |
申請者はアレンの特性を活用した新規反応の開発を目途に,1位に電子吸引性置換基(例えばフェニルスルホニル基)を有する基質を用いて検討を重ねた結果,以下の新規反応の開発に成功した.1.アルキル側鎖上の適当な位置に水酸基(或はアミノ基,カルバニオン等)を有する1-アルキル置換-1-スルホニルアレンを塩基で処理すると,新規なエンド型閉環反応(sp混成炭素への求核攻撃)が選択的に進行し,5〜9員環化合物が良好な収率で得られることを明らかにした.なお,電子吸引性基として,スルホニル基の代わりにスルホキシド基,ホスフィンオキシド基,ホスホナート基,エステル等を適宜選択しても,上記エンド型反応を進行させることが可能である.加えて,オルト位にアレニル基を有するアニリン誘導体を出発原料にして2,3-ジ置換インドール骨格の新規合成法やインドール-2,3-キノジメタンの発生法も確立した.2.アレンーアルキンのロジウム触媒を活用する分子内Pauson-Khand型反応を検討し,通常のエンイン体では合成困難なbicyco[5.3.0]骨格を容易に合成できることを見出した.また,アレンーアルケン体を用いても同様の反応が進行することが明らかとなった.さらに,アレンの代わりにカルボジイミドを用いた触媒的ヘテロPauson-Khand反応の開発にも成功した.3.二つのアレン部をベンゼン環或はオレフィンで連結させたビスアレン誘導体を発生させると,速やかに6π-電子環状反応を起こし,対応する2,3-キノジメタン誘導体が得られることを見出した.本反応において,反応系、内にジエノフィルが存在すると,2,3-キノジメタン誘導体とのDiels-Alder型反応が容易に進行することも確認した.本反応を応用して,鎖状化合物からステロイド骨格を一挙に構築する手法を確立した.また,本反応のアレン生成過程において,条件を適宜選択すると,2,3-キノジメタン誘導体から対応するシクロブテン誘導体を合成することも可能である.
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