研究概要 |
1.ルイス酸による立体選択性の規制を解明:BF_3・Et_2O存在下でのN-シンナモイル-4(S)-イソプロピルオキサゾリジン-2-チオン4を用いたタンデムマイケル-アルドール反応から目的の三環系化合物を収率良く得た。この反応で硫黄のマイケル付加によって生じる不斉中心はRの絶対配置であった。一方、n-Bu_2BOTf存在下での反応は、マイケル付加によって生じる不斉中心はSの絶対配置であった。この結果に基づいて、本反応の機構をマイケル付加、アルドール反応に分けて考察した。 反応中間体のイミニウム塩を単離し、それを用いてアルドール反応の段階の立体制御について検討したが、反応条件下で逆マイケル反応が進行し、目的を達成することができなかった。核間にメチルなどの置換基を導入した化合物の合成にも成功しているので、これを用いてアルドール反応を行っていく予定である。 2.分子間不斉マイケル-アルドール反応の検討:環状のチオカルバマートやチオ尿素型の配位子の環炭素に不斉点を有する化合物や窒素原子上に不斉置換基を有する化合物を数種合成し、それらとルイス酸の組合せにより、マイケル-アルドール反応を検討し、収率良く(最高80%)、従来よりも短時間(1.5-20h)で反応を進行させることができた。現段階で不斉収率43%eeを達成しているが、更なる不斉収率の向上を目指して新しい不斉配位子の検討を行っている。 3.反応生成物の利用:昨年の成果を利用して、2位置換基の1'位,2位,3位の3箇所に連続した不斉点を有する2-ベンジル-3-スルファニル-1-プロパノールを合成することができた。不斉N-アシル化反応については種々検討したが、高い不斉収率で進行する反応が見つかっていない。
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