研究課題/領域番号 |
16390019
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 一夫 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (20174782)
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研究分担者 |
松本 直樹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (40239108)
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キーワード | カーゴレセプター / レクチン / VIP36 / ERGIC-53 / pH依存性 / MCFD2 |
研究概要 |
細胞内において分泌タンパク質の輸送や選別を行っているレセプターには、VIP36とERGIC-53が知られている。これらのレセプターは、小胞体やゴルジ体内腔側に植物マメ科レクチンと相同の糖結合ドメインを持ち、分泌タンパク質等に付加した糖鎖を認識し、輸送選別を行っている。VIP36はゴルジ体に主に局在し、ゴルジ体から細胞表面、あるいは小胞体へ輸送を行い、一方、ERGIC-53は小胞体からゴルジ体への輸送を司っている。これらレセプターの機能を理解する上で最も重要なことは、どのようなメカニズムで糖鎖と結合し、そして解離するのかという点である。VIP36のレクチンドメインを大腸菌で発現させた可溶性VIP36を用いて、種々の糖タンパク質との結合を表面プラズモン共鳴を用いて解析を行った。その結果、VIP36はpH依存的に糖鎖と結合すること、すなわち中性では結合が見られないが、酸性になるに従って強い結合能が観察された。この理由は、おもにVIP36分子の会合によって引き起こされることが超遠心、ゲルろ過等の分析で明らかになった。また、pHを酸性から中性に戻すことにより、徐々に結合の解離が促進され、可逆的な会合であるものと予想された。一方、ERGIC-53は、stalk部位に存在する2箇所のシステイン残基により、2量体、あるいは6量体として存在して居る点でVIP36とは異なる。また、ERGIC-53と結合する新たな分子(MCFD2)が明らかにされたことから、MCFD2の関与を検討した。いずれも単離したcDNAから組換体タンパク質を作成し、フローサイトメトリーでERGIC-53の糖結合活性に及ぼす影響を調べたところ、ERGIC-53の糖結合活性はMCFD2存在下でのみ観察された。また、MCFD2のEFハンド構造内に点変異を持つ種々の変異体は、ERGIC-53との結合能が100分の1に減少しており、糖結合活性を誘導する事はできなかった。類似の構造をもつ二つの輸送・選別のレセプターは、全く異なる制御によりリガンドへの結合・解離を司っていることが示唆された。
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