大腸菌により発現させた可溶型のビオチン化ERGIC-53を用い、サイトフローメトリーで糖結合活性を調べた結果、高マンノース型糖鎖の特にM8Bイソフォームに最も強い親和性を有していた。この構造は、高マンノース型M9から小胞体(ER)αマンノシダーゼにより作られる糖鎖である。一方、同じファミリーのカーゴレセプターであるVIPLに関しも同様に糖結合特異性をしらべたところ、特にM9に最も強い親和性を持っており、Manα1-2Manα1-2Manの側鎖に結合していること、またこの糖鎖の非還元末端がGlcで置換されると、結合が強く阻害されることがわかった。Glc-Man-Man-Manの構造は、シャペロンとして知られたカルネキシンの認識配列であり、Glcの除去により遊離することが知られていることから、カルネキシンから遊離した糖蛋白質は、次にVIPLに結合すること、さらにM9がERマンノシダーゼの消化を受けM8Bになることにより、ERGIC-53に受け渡されることが予想された。VIPLはERGIC-53と構造的に類似であるが、ERに留まる特徴をもち、輸送のレセプターとは考え難い。cell surface display法を用いて作製したそれぞれのモノクローナル抗体を用い、ERストレスを負荷したHeLaS3細胞を観察すると、ERGIC-53のみが発現誘導され、且つ大部分がゴルジ体へと移行した。ERGIC-53によりプルダウンを行うとVIPLが沈降することなどから、両者が相互作用していることが明らかになっており、以上のことから、VIPLはストレス負荷時に増加するフォールディング不全の蛋白質を誤ってゴルジ体に運ばない制御を担っていると予想された。
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