神経回路は、特異な極性を示す神経細胞がその神経突起を介した接着により形作る複雑なネットワークシステムである。軸索は様々な軸索ガイダンス分子に導かれて伸長し、目的のターゲット細胞に到達し、複雑な神経回路を形成する。セマフォリンはその特異的な受容体、Plexinを介して軸索に反発作用を引き起こすことが知られている。我々は、Sema4Dの受容体、Plexin-B1の細胞内領域がR-Rasに対するGAPを直接コードしており、R-Rasの活性を抑制することにより、R-Rasによるインテグリンの活性化を抑制することにより、反発作用を発揮することを見いだした。さらに、R-Ras GAP活性の下流のシグナル伝達経路を解析し、R-Ras GAPによるR-Rasの活性の抑制に引き続き、PI3K、Aktの活性の抑制、その結果によるGSK3の活性化、CRMP-2のリン酸化によるCRMP-2による微小管重合の抑制により、神経軸索の退縮を引き起こすことを明らかにした。一方で、脳・神経系に主要に発現しているRhoファミリーG蛋白質の一種、Rnd2の特異的なエフェクターとして新規な分子、Pragminを酵母のtwo-hybrid法によりクローニングした。PragminはRnd2の結合によりRhoAを活性化し、PC12細胞においてRhoA-Rhoキナーゼの活性化により神経突起の退縮を引き起こした。一方で、Rndサブファミリーの別のG蛋白質、Rnd1はRhoAを抑制することが知られているので、Rnd1とRnd2はお互いにアンタゴニスティックに働くことにより、RhoAの活性を制御して神経細胞の形態調節をしているものと思われる。
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