研究概要 |
HIV-1のコレセプター(CCR5,CXCR4)の第2細胞外ドメインの一部を構成するアーチ状の特殊立体構造(UPA,Undecapeptidyl Arch)の各々5残基からなるキメラ抗原cCD-MAPを調製した。マウスにこの抗原を免疫すると、本抗原に対して立体特異的抗体をそれぞれ産生し、CCR5およびCXCR4両レセプターに特異的に結合し、R5およびX4ウイルスに対して強い抗HIV活性を示した。特に、cCD-MAP抗原から得られた抗体は臨床分離株のR5及びX4ウイルス(clade A,C,E)の感染も強く阻害した。 さらに、cCD-MAPをカニクイザルに免疫し、得られた抗血清は、in vitroにおけるELISAにおいてcCD抗原への活性が高ければ高いほど、R5及びX4ウイルス(clade A,C,E)の感染をそれぞれ強く阻害した。また、それは、同様に、SIVmac239の感染もMAGIC-5 assayにおいて有意に阻害することを明らかにした。 最近、性的パートナーがHIV-1陽性にもかかわらず感染が成立していない人において、唾液、膣分泌液もしくは精液中にCCR5特異的なIgAが誘導(Barassi et al. Blood. 104,2205-2206(2004)され、また、血清中にCCR5に対する自己抗体を有するHIV感染のハイリスクの人々は、HIV-1の感染から逃れることができ、しかも、感染が長期に渡って成立しないことが報告されている(Lopalco et al. J.Immunol. 164,3426-3433(2000))。したがって、HIV-1のコレセプターに対する立体特異的自己抗体を膣粘膜組織、かつ小腸粘膜免疫組織に安定的に誘導できれば、ウイルス感染を防止し、エイズ発症を抑制できると考えられる。
|