研究課題
NMuMG細胞をTGF-βで刺激すると、細胞内のROS産生とともに、産生系の一つ、NADPH oxidaseの触媒サブユニットであるNox4の発現誘導がみられた。Nox4の発現はmRNAレベルでは処理後約6時間で有意に上昇し、蛋白質レベルでも発現の誘導が確認できた。さらに蛋白質合成阻害剤存在下でも発現の誘導が見られたことから、TGF-β刺激によるNox4の発現は間接的な蛋白質合成を必要とせず、直接TGF-βシグナルにより誘導されることが示唆された。以前、当研究室では、低分子のROS産生系阻害剤を用いた検討から、TGF-βによる一部の遺伝子発現がミトコンドリア由来のROSにより制御されている可能性を見出している。そこで、このNox4の誘導が同じ経路によるものか、細胞内に存在するROS消去系酵素を細胞内に過剰発現させ、発現への影響を検討した。その結果、Nox4の発現誘導がCatalase過剰発現下で抑制され、Mn-SOD過剰発現下で逆に促進された。さらに、Catalaseをミトコンドリアに局在させたところ、より強い抑制効果がみられた。これらのことから、TGF-β刺激によりミトコンドリアからのROSを介してNADPH oxidaseのNox4が誘導されることが分かった。この意義について、Nox4に対するsiRNAを用いてこれをknock downし、検討した。その結果、MMP10の発現を抑制し、さらに、TGF-βによるストレスファイバーの形成を抑制した。以上の結果より、TGF-βはミトコンドリア由来のROSをシグナル伝達因子として、新たにROS産生系のNox4の発現を誘導し、その結果、細胞の悪性化形質誘導に寄与することが示唆され、ROSの時空間的産生制御が遺伝子発現を制御する可能性が考えられた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (5件)
Oncogene. in press
Cancer Sci. 98巻・1号
ページ: 58-67
J. Biol. Chem. 281巻・31号
ページ: 22048-22061
Biol. Pharm. Bullet :. 29巻・7号
ページ: 1344-1348
Biol. Pharm. Bullet :. 29巻・10号
ページ: 1999-2003