研究概要 |
申請者らはアミロイド蛋白(Aβ)産生促進因子として小胞体(ER)ストレス誘導性のHerpを同定している。本研究目的は、HerpによるAβ産生促進機構およびHerpのERストレスにおける役割を解析し、Aβ産生とERストレス応答の両者で共通する分子基盤を明らかにすることである。 Aβ産生酵素γセクレターゼであるプレセニリン(PS)複合体は、4つの膜蛋白[PS、ニカストリン(NCT)、APH-1、PEN-2]からなるが、これら因子の細胞内の量は厳密に制御されている。すなわち、PS複合体を形成しない構成因子は、プロテアソームですみやかに分解されることが明らかにされている。しかしながら、その詳細な分解経路は不明である。 申請者らは、Herpの持つユビキチン様ドメイン(Ub)を欠失したΔUb-Herpを発現させると、PS前駆体やNCTの分解が顕著に阻害され細胞内に蓄積することを明らかにした。さらに、ΔUb-Herpを発現させると、PSやNCTのユビキチン化の程度が著しく阻害され、逆にHerpを発現させたものでは、ユビキチン化の程度が促進されていることが明らかとなった。このことより、Herpは、Ubを介して、複合体を形成しない余剰なPS前駆体やNCTのユビキチン化を促進する蛋白であることが明らかとなった。 また、細胞をERストレス誘導剤で処理すると、PSおよびNCTの分解が促進されたが、その分解の程度は、Herp-/-細胞では、野生型に比べて明かに抑制されることを見出した。このとは、ERストレス刺激におけるPSやNCTの分解経路にもHerpが関わっていることを示唆するものであった。 以上の結果から、Herpは、通常な生理的条件下では、PS複合体のような膜蛋白複合体形成の際に複合体とならない不要な複構成因子に結合し、これら不要蛋白のユビキチン化を促進し、その分解,除去に機能している蛋白であること考えられた。また、ERストレス下でも、Herpは、ミスフォールドした不要な蛋白に結合し、同様に、その分解に機能している蛋白であると思われる。
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