我々は、現在臨床で用いられている薬剤よりも強力な抗マラリア作用を示す植物アルカロイドであるフェブリフジンを起点として、新たな抗マラリア剤の開発研究を行った。フェブリフジンは強力な抗マラリア作用を示すものの、同時に強い副作用をもつことが知られている。加えて、フェブリフジンは、水性溶媒中で抗マラリア作用の弱いイソフェブリフジンへと容易に異性化する。したがって、化学的に安定で、副作用が大幅に軽減された誘導体を創製する必要がある。 本研究では、フェブリフジンの異性化反応を阻止するために、キナゾリン環とピペリジン環をつなぐリンカー部である鎖状炭化水素部分を変化させた誘導体を合成した。すなわち、リンカー部に存在するカルボニル基をメチレン基へと代えた誘導体を合成した。その後、リンカー部の炭素数を変化させた誘導体を合成した。それらの抗マラリア活性を検討した結果、カルボニル基をメチレン基に代えた誘導体は、抗マラリア活性がフェブリフジンよりも若干劣るものの、副作用も大幅に減弱した。この誘導体は、フェブリフジンに代わりうる抗マラリア剤開発におけるリード化合物と考えられる。 一方、生薬・常山からフェブリフジン同族体の単離を試みた。しかしながら、フェブリフジン以外のアルカロイドを見いだせなかった。さらに、フェブリフジンを数種の微生物によって変換反応を試みたが、既に我々が合成した酸化体以外の化合物を見いだせなかった。
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