マラリアは21世紀に撲滅させなければならない感染症の一つである。現在、マラリア治療には数種類の薬剤が使用されているものの、いずれの薬剤に対しても耐性原虫が発生しており、新たな抗マラリア剤の早急な開発が強く求められている。 我々は、中国で用いられる生薬・常山に含まれるアルカロイド・フェブリフジンがクロロキンなどの既存薬よりも強力な抗マラリア作用を示すことを見出した。本研究では、フェブリフジンを起点化合物と位置づけ、医薬品化学領域から新たな抗マラリア剤の開発を目指して研究を進めた。 フェブリフジンは強力な抗マラリア作用を示すものの、同時に重篤な胃腸障害などの副作用をもつことが知られている。したがって、臨床薬を開発するためには、副作用が大幅に軽減された誘導体を得る必要がある。本研究では、フェブリフジンの構造をキナゾリン環、ピペリジン環、それらの2種の環を結合するリンカー部の3部に分けて考え、それぞれの部位の構造を変換した誘導体を合成した。その結果、ピペリジン環やリンカー部の構造を大きく変えた誘導体では、もはや強い抗マラリア作用が保持されないことがわかった。一方、キナゾリン環のベンゼン環部分をシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロペプタン環のような脂肪環に変換した誘導体は、抗マラリアを保持したまま副作用が軽減されることが明らかとなった。
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