研究課題
基盤研究(B)
マラリアの制圧を考えるとき薬剤耐性を克服できる薬剤の開発は第一義的に重要である。私は薬剤耐性熱帯熱マラリア原虫に有効な新規抗マラリア薬を開発し、学術研究の面で国際貢献すると同時に、作用機序の明らかな抗マラリア薬をマラリア流行地に提供したい。下記に今年度の研究成果を記する。(1)1,2,4,5-テトラオキサシクロアルカン類化合物の誘導体の研究を行い、今年度に新たに20種類の誘導体を合成した。これら化合物の培養熱帯熱マラリア原虫、および培養動物細胞を用い、抗マラリア薬効と選択毒性を検討した結果、1×10^<-7>M以下で抗マラリア活性を示す化合物を3種類得た。これら化合物はいずれも1,2,4,5-テトラオキサシクロアルカンの骨格を有し、抗マラリア活性にこの構造は必須であることがわかった。(2)環状過酸化化合物の抗マラリア標的分子の探索のために、アフィニティカラムの条件検討を行った。環状過酸化化合物のアミノ基残基とアズルラクトン残基がアミド結合することを応用したアフィニティカラムを作成し、マラリア原虫粗抽出物より環状過酸化化合物特異的に結合するたんぱく質を見いだした。現在、これらたんぱく質の分離条件の改良研究を行っている。(3)環状過酸化化合物に耐性を有する熱帯熱マラリア原虫を獲得するために、薬剤プレッシャーとクローニング手法により1×10^<-7>Mでも培養できる耐性熱帯熱マラリア原虫株を得た。この原虫株はアルテミシニンに対しても薬剤耐性を示し、これら化合物の薬剤耐性、および交差耐性に関わる遺伝子の解析研究を開始した。(4)常山誘導体の合成研究を行い、10種類の誘導体の中から抗マラリア活性を示す化合物を1種類選抜した。この化合物の抗マラリア活性は1×10^<-6>Mと弱い抗マラリア活性を示したが、細胞毒性の値が低く、常山アルカロイドが有する強い細胞毒性が生じる弱点を改善できるキー化合物になりえる知見を得た。現在細胞毒性をさらに軽減させるための誘導体を設計し、合成中である。(5)メフロキン耐性熱帯熱マラリア原虫の薬剤耐性機構の解析のために、アフィメトリックス社のマラリア専用のGene Chip(Plasmodium/Anopheles DNA Micro Array)を用いて遺伝子解析を行ったところ、マラリア原虫のpfmdr-1遺伝子のみ増幅し、その他のpfcrt、およびpfmrpの増幅は見られなかった。この結果より他の薬剤耐性に関わる遺伝子はメフロキン耐性には影響しないことがわかった。現在、遺伝子解析で相違があると認められた100種類の遺伝子について解析を行っている。また、メフロキン耐性の熱帯熱マラリア原虫に抗結核薬であるリファンピシンを併用するとメフロキンの感受性が60倍回復する結果を得た。
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