研究課題
マラリアは、現在でも熱帯地域全体に広く蔓延しているだけでなく、温帯の多くの地域でも発生しており、WHOの最新統計によると世界中で年間2億7,000万人の人々がマラリアに感染し、その内、100万人以上が死亡している(2000年WHOの報告)。近年、マラリアの特効薬であるクロロキンに耐性を示すマラリア原虫が出現し、それが全流行地に分布するに及び撲滅作戦は遂行不可能となり、現在に至っている。私は、薬剤耐性マラリアを克服できる新しいマラリア治療薬の開発を行い、マラリア制圧に寄与することを研究目的として本研究を進める。有機合成品である環状化酸化化合物、及び天然資源由来の常山アルカロイド誘導体を中心に最適の抗マラリア候補薬の選抜とこれら化合物の抗マラリア作用機序の解明を行う。平成17年度の研究成果を下記に示す。1.環状過酸化化合物の作用メカニズムの解析を網羅的に行った。昨年度に見いだしたマラリア原虫たんぱく質の2次元電気泳動分離条件をもとにN-251及びN-89の作用前後のたんぱく質のパターンを比較し、相違のあるバンドを切り出し、MALDI-TOF/MSでたんぱく質を同定した。2.N-251誘導体をリガンドとするアフィニティ法を用い、熱帯熱マラリア原虫のマラリア原虫粗抽出液から分子標的候補タンパク質を単離し、そのアミノ酸配列より遺伝子を特定した(両実験で得られた関連タンパク質は現在再現性の実験を行っているので、再現性を実験を行っている。3.マラリア原虫にN-251、N-89、およびアルテミシニン作用時の遺伝子の発現パターンをアフィメトリクス社のGeneChip^<【○!R】>(Plasmodium/Anopheles Genome Array)を用いて解析し、上記の実験で得られたタンパク質が遺伝子の発現パターンと関連するかどうかを調べ、最終的にこれら環状過酸化化合物の標的分子を決定する実験を行っている。
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