研究概要 |
薬物と受容体との疎水性相互作用による形状認識の観点から、適度な分子サイズをもった球状の疎水性構造単位は医薬分子の設計に極めて有望な素材である。本研究ではステロイド受容体等の核内受容体と形状的に一致する球状疎水性構造をリガンドの分子設計に応用することにより、新しいアゴニスト/アンタゴニ1スト活性の制御系を見出し、新規骨格を有するエストロゲン拮抗薬、アンドロゲン拮抗薬等の抗がん作用、骨を標的とする選択的エストロゲン受容体制御薬を目標としている。18年度は上記のコンセプトによる分子設計、合成、活性評価を行い、次の成果を得た。 1)エストロゲン受容体リガンドの中核となる疎水性構造を球状ホウ素クラスター,球状炭化水素からさらに単純なシクロヘキサン環に変換した化合物群の設計、合成を検討し、シクロヘキサン-1,3-ビスフェノール誘導体に塩基性側鎖を導入することにより、強力なアゴニスト活性が得られることを見出した。これらは、中心疎水性構造の相違によるアンタゴニスト/アゴニストのバランスの制御が可能であることを示している。 2)前年度のアンドロゲン受容体ARアンタゴニスト、エストロゲン受容体ERアゴニスト創製の結果に基づき、電子吸引性基の置換した芳香環とフェノール環をともに有する有するm-カルボラン誘導体がER-ARデュアルリガンド(ARアンタゴニスト-ERアゴニスト)であることを見出した。 3)本研究で見出したカルボラン含有選択的RXRアンタゴニストを用いた共同研究により、レチノイドが関与する組織分化機構に関する重要な知見が得られている。 これらの結果は、核内受容体制御化合物の設計への球状疎水性構造の適性を実証するとともに、従来の医薬と異なる新規骨格を有し体内動態が異なる新しい医薬候補化合物を創製することに繋がるものである。
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