研究概要 |
化学物質過敏症の発症に至る一連のプロセスで、マクロファージ及びその類縁細胞は感作過程における抗原提示、感作の補助となるサイトカインの産生、惹起過程にサイトカインを産生するエフェクター細胞など、多様な機能を発揮する。この多様な機能は種々のマクロファージ亜集団の一部によって担われていると予想される。本年度はこれら亜集団の分別同定を行うこと、特にレクチン分子を介して発揮される亜集団の機能を理解すること、の2点を目的とした。具体的に(1)感作過程で末梢リンパ節に観察されるMGL1/2発現マクロファージ様細胞の分布と同定、(2)惹起過程で炎症組織に観察される特徴的なマクロファージ亜集団の浸潤と生物学的意義の2点を検討した。 (1)MGL1のみ、あるいはMGL2のみを認識するモノクローナル抗体を用い、末梢リンパ節におけるマクロファージ様細胞の分布を検討した。MGL1陽性細胞は主に辺縁洞、髄質、皮質の一部に分布したのに対し、MGL2細胞はむしろ皮質内に分布した。MGL2陽性細胞はB220、CD8、MHCII、CD11cなどの分化マーカーを発現していた。末梢での感作に伴い、所属リンパ節においてプラズマサイトイド樹状細胞様の細胞の出現が示唆された。この細胞の移動機構、リンパ節での役割を考察するため、リンパ節内に存在するMGL2会合分子の同定を行った。分子量53,37,33kDa、のレクチン結合分子を既に電気泳動のゲル上で同定しており、現在構造を決定中である。 (2)高分子蛋白質抗原で惹起した慢性皮膚炎症においてMGL1陽性細胞が炎症惹起後2日目に観察された。この細胞はIL-1aを著明に産生する細胞亜集団であった。抗IL-1a抗体を炎症部位に投与すると炎症は著明に抑制されたことから、この細胞の産生するIL-1aなどのサイトカインが病態形成に強く関与するものと推察された。
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