研究概要 |
1.銅イオンとヒト血漿をインキュベートすることにより脂質過酸化を誘導した場合の血小板活性化因子(PAF)様酸化ホスファチジルコリン(PC)のクラス組成は、短鎖ジカルボン酸含有PC>短鎖モノカルボン酸含有PC>短鎖ジカルボン酸セミアルデヒド含有PCであったが、鉄イオンで血漿脂質の過酸化を惹起した場合では、モノカルボン酸含有PC>ジカルボン酸セミアルデヒド含有PCであり、ジカルボン酸含有PCは全く検出されなかった。本結果は、酸化ストレスの種類によりPAF様酸化PCの存在比が変化し、それらによる病態生理的影響も異なってくることを示唆している。 2.ヒト血漿より精製したリゾホスホリパーゼD(lysoPLD)やリコンビナントlysoPLD/autotaxinが,がリゾホスファチジルコリン(LPC)のみならず、PAF様酸化PCを分解して短鎖アシル基を持つホスファチジン酸とコリンを与えることを明らかにした。 3.マイクロプレート上で血漿などの動物体液やその稀釈試料をリゾホスファチジルコリン(LPC)などのコリン含有脂質とインキュベートし、遊離してくるコリンを定量する方法を構築し、種々の体液のlysoPLD活性を測定して、以下の知見を得た。 (1)飽和脂肪酸を持つLPCを基質として測定すると、妊娠中毒症や切迫早産の患者の血清lysoPLD活性は、正常妊娠女性の活性より有意に高かった。 (2)卵巣癌、卵巣嚢腫、皮様嚢胞,子宮筋腫,子宮内膜症の患者の腹水には高いlysoPLD活性を検出した。特に、卵巣癌患者の値は高く、他の患者群の値の間で有意な差が認められたが、これらの群の血清lysoPLD活性の間には有意な差は認められなかった。
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