研究概要 |
1.酸化ストレスを受け新生するリン脂質による血管内皮細胞障害 3種の短鎖ジカルボン酸含有ホスファチジルコリン(DC-PC;alkyl 16:0/4:0,16:0/5:0,16:0/9:0)は10μMで弱いながらもヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の増殖を促進を示したが、25μMでは著しい細胞死を引き起こした。HUVECに20μM短鎖ジカルボン酸セミアルデヒド含有ホスファチジルコリン(DCsa-PC;16:0/5:0,16:0/9:0)を作用させると、細胞数が幾分か増加したが、50μMのDCsa-PC添加では生細胞の数は大きく減少した。これらPAF様リン脂質の加水分解体である1-パルミトイル-リゾホスファチジルコリン(16:0-LPC)も25μMで軽度の細胞増殖亢進作用を、50μMで強い細胞死誘導作用を示した。本研究結果は、喫煙等の酸化ストレスにより速やかに血液中で生成するPAF様リン脂質やその代謝体が血管壁の内皮細胞の機能障害を誘導し、動脈硬化の発症や進展に関与する可能性を示唆している。 2.細胞増殖因子リゾホスファチジン酸産生酵素の活性調節因子の探索 96穴プレート上で血漿リゾホスホリパーゼD活性を検定する方法を改良し、本酵素を活性化する、あるいは阻害する化合物の探索を行なった。その結果、ケルセチンやその構造類似体が血漿リゾホスホリパーゼD活性を濃度依存的に抑制することが明らかとなった。 3.LPAを亜鉛錯体Phos-tagと複合体を形成させMALDI-TOF-MSで分析する方法を改良し、ニワトリ卵白のLPAを分析した。また、ESI-MS-MSを用いてLPA以外のリゾ脂質を分析した。その結果、ニワトリ卵白を保温すると,卵白のリゾホスホリパーゼDがリゾホスファチジルコリンに働きLPAが緩やかに生成してくることが明らかとなった。
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