コレステロールの脳内代謝物であり、蓄積によって神経毒性を誘起する24(S)hydroxycholesterolの脳関門排出輸送を解析したところ、放射標識24(S)hydroxycholesterolは脳関門を介して脳から半減期約100分で消失することが明らかとなった。さらにその排出過程は非標識24(S)hydroxycholesterolで阻害されたが、cholesterolでは阻害されなかった。このことは、何らかの輸送系が24(S)hydroxycholesterolの脳関門排出輸送に関わっていることをしめしている。さらに、阻害剤の効果から、有機アニオン輸送系であるoatp familyが24(S)hydroxycholesterolの脳関門排出輸送に関わっていることが示唆された。さらに、24(S)hydroxycholesterolがoatpの基質となることを明らかにした。また、免疫染色の手法を用いてマウスの血液脳関門にoatp3が発現していることを明らかにした。コレステロールも含む脂質輸送に関わるATP binding cassette (ABC) transporter A familyの脳関門での発現を検討したところ、ABCA1-9のサブタイプの発現が検出された。これらの結果は、血液脳関門は脳内のコレステロールの制御と、その代謝物による神経毒性の発現を抑制する役割を果たしていることを示唆している。 神経毒性物質であるキノリン酸の脳関門排出輸送に関わる分子を同定するために条件的不死化ラット脳毛細血管内皮細胞(TR-BBB)のmRNAを抽出し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入し、キノリン酸の取込活性を測定したところ、水を注入したコントロールと比較し、有意な取込活性が検出された。さらにmRNAを分画し、それぞれの分画を卵母細胞に注入し、キノリン酸の取込活性を測定したところ、一部の分画に取込活性の増強が認められた。この結果は、この分画にキノリン酸を輸送する輸送担体のmRNAが含まれていることを示している。
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