研究課題
基盤研究(B)
本研究は、まず、LYVE-1やVEGFR-3、Prox-1等のリンパ管特異的なタンパクに対する免疫組織化学によって、甲状腺、肺、胸膜、横隔膜、肝臓、消化管、バイエル板、虫垂、扁桃腺、リンパ節等、種々の器官におけるリンパ管分布、横隔膜におけるリンパ管の発達を検証した。その結果、リンパ管分布に関する従来の報告が証明された。また、横隔膜では、あらかじめ内皮細胞が遊走していき、その後に管を形成することが明らかになった。次に、グリーンラットおよび通常のSDラットの胸管および乳糜槽からリンパ管内皮細胞(LECs)を採取し、その培養細胞を用いて、in vitroおよびin vivoにおけるリンパ管新生・再生機構を解析することを目的として実験を行い、以下の結果を得た。(1)培養細胞は、ウェスタンブロット法および免疫組織化学によって、LYVE-1、VEGFR-3を発現していることが証明され、リンパ管内皮細胞(以下LECs)であることが確認された。(2)LECsを通常のCO_2インキュベーターで培養すると、二次元的にコンフルエントになると増殖が停止するが、低酸素下では、細胞が何層にも重なって増殖し、立体的にリンパ管網が形成されることが明らかになった。(3)LECsを自然の立体構造を保持したコラーゲン線維網上で培養すると、急速に増殖し、立体的なリンパ管網が形成されることが明らかになった。(4)LECsを幼弱ラットの腹腔内に移植すると、横隔膜のリンパ管内に入り、一部は横隔膜のレシーピエントのリンパ管壁に取り込まれ、一部は独自のリンパ管や結節を形成した。移植LECsがリンパ管形成に関与する可能性が示された。(5)グリーンラットの末梢血から採取したCD34^+細胞を低酸素下で三次元培養すると、リンパ管様の構造が形成された。このことから、末梢血中にリンパ管内皮細胞の幹細胞があると考えられる。
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