研究課題
本研究は「ATP受容体チャネルP2X2の構造の柔軟性に基づく、状況依存的な構造と機能の変化」を知ることをゴールとしている。今年度、以下の3点について成果を挙げた。「1」最終精製レコンビナント蛋白を用い、単粒子構造解析を行った。グルタルアルデヒドで架橋後、non-denatureゲルにて電気泳動したところ、主たるバンドのサイズからP2X_2蛋白が3量体であることが示された。さらに、ATP投与後、同様な実験を行うと3量体のバンドが上方にシフトした。このシフトは、GTPやアデノシンの投与や、架橋後のATP投与によっては見られなかったため、リガンド結合により、易動度が変わるような構造変化が起こることが示唆された。最終精製のピーク分画を用い、酢酸ウランにより負染色して電顕撮影したところ、単一蛋白粒子像が観察された。単粒子構造解析の手法により、P2X_2蛋白が3量体であることが確認され、また、大きな細胞外領域を持つ逆ピラミッド状の構造をしていることが明らかになった。「2」リン脂質によるチャネル活性の動的調節について解析した。その結果、他のチャネルで広く知られているPIP2ではなくPIP3による調節を受けていること、さらに、活性調節とチャネルポアの拡大が密接にリンクしていて、拡大したポアがPIP3が減少した状況下で活性を次第に失うことが明らかになった。「3」膜電位依存的動的変化について解析した。その結果、ATPによってチャネルが活性化された後の定常状態において膜電位を変化させると、P2X2チャネル電流が過分極側でゆっくり活性化されること、さらに、その活性化過程に、第2膜貫通部位中央に位置するグリシン残基が重要であることが明らかになった。この結果は、P2X2がリガンドゲートチャネルでありながら、なんらかの膜電位依存性ゲート機構を持つことを示唆する。
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