研究課題
背景と目的(1)発熱に関わる第1段階の酵素ボスホリパーゼA_2(PLA_2)の研究過程で、PLA_2の産物であるアラキドン酸(AA)がCOX-2を誘導することを明らかにした。本年度はAAがCOX-2を誘導する機構について検討した。具体的には、AAは3種の酵素で代謝され、生理活性物質となりうる。その酵素はシクロオキシゲナーゼ(COX)、リポキシゲナーゼ(LOX)、エポキシゲナーゼ(EPOX)である。これらの酵素阻害剤を前処置したラットにAAを投与して発熱とCOX-2の誘導を調べた。(2)末梢組織の炎症でPGE2が産生される。これに関るPLA_2種を検討した。(3)転写調節因子Nuclear factor kappa B(NFkB)は炎症に関る遺伝子を誘導することが知られている。神経細胞で神経活動がNFkBを活性化するか検討した。結果(1)ラットにおいてCOX阻害剤はAAによる発熱をほぼ完全に抑制し、COX-2の誘導を部分的に抑制した。LOX阻害剤とEPOX阻害剤はAAの発熱とCOX-2誘導作用に全く影響を示さなかった。これらの結果はAAとそのCOX代謝産物がCOX-2を誘導していることを示唆する。(2)PGTmRNAはラット脳において、クモ膜に恒常的に発現していた。LPS腹腔内投与によりPGTmRNAはクモ膜で増加し、血管内皮細胞でも新たに発現した。これと一致したPGTタンパク質の誘導も観察された。PGTが発熱時のPGE2輸送に関っていることが示唆された。(3)マウスの右後肢にカプサイシン、ホルマリンなどの発痛物質を投与すると、対応する1次知覚神経の細胞体でNFkBのリン酸化と核移行が観察された。電気刺激でも同様の反応が観察された。これらの反応は5-15分で生じた。NFkBの下流でどのような遺伝子が誘導されるかは不明であるが、神経の活性化マーカーとして有用である。
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