平成18年度は、「leukemia inhibitory factor(LIF)による、心筋組織幹細胞の血管内皮細胞への分化の分子メカニズムに関する研究」を継続した。具体的には、以下の2点; (1)心筋組織幹細胞を血管内皮細胞へ分化させるサイトカイン/増殖因子の検索 (2)心筋組織幹細胞におけるLIF/STAT3シグナルの標的分子の検索。 結果を以下に記す。 (1)心筋組織幹細胞を血管内皮細胞へ分化させるサイトカイン/増殖因子の検索 心筋組織幹細胞の血管内皮細胞への分化誘導が、LIF以外のサイトカイン/増殖因子によって惹起されるかどうかを検討した。対象としたサイトカインのうち、血管新生因子としてよく知られているVEGF、bFGFは分化誘導を惹起しないものの、IL-6関連サイトカインのうち数種類のサイトカインが、分化誘導を惹き起こすことを明らかにした。このことは、心筋組織幹細胞の血管内皮細胞への分化が、さまざまな細胞外シグナルにより制御されていることを示し、組織幹細胞を起源とする血管形成の可能性を支持する。 (2)心筋組織幹細胞におけるLIF/STAT3シグナルの標的分子の検索 心筋組織幹細胞をLIFで刺激後、3時間後、8時間後誘導される遺伝子の検索をdifferential display法にて行った。その結果、一次スクリーニングで約80個の遺伝子を抽出、二次スクリーニングを行なった。また、そのうち血管形成との関連がすでに報告されている遺伝子に関しては、抑制型変異体を作製し、アデノウイルスベクターを構築した。 また、IL-6関連サイトカインの中でも、IL-11が心筋細胞に直接作用することを見出した。IL-11は、海外において血小板減少症に臨床で使用されており、当該研究の臨床応用の端緒となると考えている。
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