これまでに我々はラット脳初代培養細胞から単離したミクログリアと神経細胞の共培養系を用いて、ATPにより活性化を受けたミクログリアはグルタミン酸誘発神経細胞死に対して神経保護効果を発揮することを見出した。このミクログリアの保護活性は、ミクログリアに刺激を与えない限り認められなかった。またリポポリサッカラィド(LPS)でミクログリアを刺激した場合にはむしろ神経傷害は促進された。しかし、ATP活性化ミクログリアはその後LPSで刺激しても、LPS単独で認められる傷害促進作用は示さず、ATP単独刺激と同じ神経保護効果を現す。このATPの効果はいずれもP2X_7受容体を介する。これらのin vivoで得られた知見をもとに本研究では、脳虚血モデル動物を用いてミクログリアの神経保護効果をin vivoで確認することを目的とした。まず、ラットをフローセン麻酔下、中大脳動脈を閉塞することにより脳虚血(MCAO)モデルを作成した。閉塞1時間後にミクログリアを脳室内に投与し、1時間後に再還流を行った。その3日後にローターロッドテストにより運動機能を測定した。また、ホルマリン固定後に脳切片を作製し、MAP2染色により神経細胞死を定量し、Iba1抗体によるミクログリア染色、GFAPによるアストロサイト染色も行った。その結果、MCAOラットでは運動機能に著しい低下が認められ、虚血側の大脳皮質、特に線条体ににおいて強い神経細脚死とミクログリアの集積・活性化、さらにアストログリオーシスの所見が認められた。ミクログリア移植群では、運動機能の低下・神経細胞死ともに抑制された。さらに、ミグログリアをあらかじめP2X_7受容体刺激薬BzATPにより活性化することにより、その保護効果はより強まる傾向が認められた。さらに例数を重ね、ミクログリアのin vivoにおける神経保護効果とP2X_7受容体の役割について明らかにする予定である。
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