研究課題
ミクログリアは神経傷害時に活性化され、死細胞を貧食するとともにさまざまな生理活性物質を放出する。その中には、細胞を保護するものもあれば傷害的に働くものもある。ラット脳ミクログリア・神経細胞の共培養系において、ATPによりP2X_7受容体の活性化を受けたミクログリアは神経保護効果を発揮し、一方、LPSで刺激した場合にはむしろ神経傷害を促進した。このATP活性化ミクログリアの神経保護作用をin vivoで確認する目的で、京都薬科大学病態生理学教室谷口隆之教授・北村佳久助教授との共同研究により、脳虚血モデル動物を用いてミクログリアの神経保護効果を検討した。ラットをフローセン麻酔下、中大脳動脈を閉塞することにより脳虚血(MCAO)モデルを作成した。閉塞1時間後にミクログリアを脳室内に投与し、1時間後に再還流を行った。その3日後にローターロッドテストにより運動機能を測定した。また、ホルマリン固定後に脳切片を作製し、MAP2染色により神経細胞死を定量し、Iba1抗体によるミクログリア染色、GFAPによるデストロサイト染色も行った。その結果、MCAOラットでは運動機能に著しい低下が認められ、虚血側の大脳皮質、特に線条体において強い神経細胞死とミクログリアの集積・活性化、さらにアストログリオーシスの所見が認められた。ミクログリア移植群では、運動機能の低下・神経細胞死ともに抑制された。さらに、あらかじめP2X_7受容体刺激薬BzATPにより活性化されたミクログリアを移植すると、その保護効果はより強まる傾向が認められた。一方、ミクログリアに発現するα7ニコチン性アセチルコリン受容体の活性化は、イオンチャネルとは異なるシグナル伝達を駆動し、ミクログリアのLPSによる過剰なTNF放出を抑制し、ATP受容体を介した保護的TNF放出を促進することを見出した。従って、ニコチンはミクログリアの神経保護機能を高める重要な調節的役割を担う可能性が考えられる。このニコチンの効果も引き続きモデル動物で検討を行う予定である。
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Journal of Neuroscience Research (In press)