研究課題
基盤研究(B)
真核生物では1つの遺伝子が複数のエクソンから構成され、多細胞生物では多くの遺伝子が選択的スプライシングによって複数の最終遺伝子産物を生成する(ヒトでは全遺伝子の約6割と推定されている)。したがって、選択的スプライシングの制御は多細胞生物に特有の遺伝子発現制御機構として、これまでによく研究されている転写調節に勝るとも劣らない生物的意義を有するものと考えられる。そこで、我々が解明しようとしているのは、転写産物から成熟mRNAへのプロセシング段階での制御機構が存在するか、存在するとすればどのようなシグナル伝達機構下で制御されているかという問題である。ヒトゲノムには現在約700個のRNA結合蛋白質が知られている。我々は特にSRタンパク質およびそのリン酸化制御に着目し、線虫やウイルスを標的に生物学的意義を求めた。SR蛋白質ファミリーはSer-Arg反復配列からなるRSドメインを共通に持ち、このRSドメインのリン酸化は、SRPK、PRP4、Clk等の特定のキナーゼが行う。Clkによるスプライシング制御機構を解析するために、化合物ライブラリーをスクリーニングし、Clk1/StyとClk4を特異的に阻害する化合物TG003を得た。このTG003は試験管内でのSF2/ASF依存的なスプライシングを阻害した。また、細胞内でもSRタンパク質のリン酸化レベルを低下させ、核スペックルの解離を抑制し、Clk1/Sty依存的な選択的スプライシングを抑制した。Clk活性亢進によりスプライシング異常や発生異常が惹起されることから、TG003はそうしたスプライシング異常に起因する疾患に治療薬となる可能性があり、現在、海外の複数の研究グループと共同研究が進行中である。
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Bioinformatics (in press)
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