研究概要 |
糖鎖遺伝子ノックアウトマウスが示す様々な異常表現型の発症メカニズムと、残存糖脂質による代償機能の解析をめざして、in vivoおよびin vitroの研究を展開した。 GM2/GD2合成酵素遺伝子,GD3合成酵素遺伝子の両方を欠失するダブルノックアウト(KO)マウスの神経機能,行動,神経組織形態につき詳細な検討を行った。その結果、 1.ダブルKOマウスでは生後間もない時期より末梢神経の変性を認めた。 2.20週齢過ぎから出現する皮膚損傷部位には神経線維の増殖が見られた。 3.著明な記憶,学習能の低下と抗不安を認めた。 4.知覚機能低下(機械刺激に対する知覚の低下)が加齢と共に進行した。 5.アセチルコリンのムスカリン型受容体アゴニストであるOxotremorine刺激に対する反応の低下と、セロトニン受容体5-HT2のアゴニストDOIに対するtwitch反応の亢進を認めた。 以上の結果よりGM3以外のガングリオシドの存在が神経組織の維持にとって必須であり、その欠失がアセチルコリンとセロトニンなどのシグナル伝達の障害を惹起することにより、学習,記憶能を低下させることが判明した。 現在ダブルKOと野生型マウスにおける神経組織発現遺伝子の発現プロフィールの比較に基づき、変性に関連する遺伝子を探索中である。また、舌下神経切断実験によって、神経再生における糖脂質糖鎖の役割を明らかにすべく、システムの構築を行った。 神経切断後、舌から注入したHRPは完全に逆行性輸送が遮断されるが、2〜3週後から徐々に回復し、6週後には90%のレベルまで回復することが示された。今後、タブルKOマウスを用いて舌下神経切断後の再生能と、外来性のガングリオシドを注入した時の再生能亢進につき検討する。
|