研究課題/領域番号 |
16390075
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
古川 鋼一 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 教授 (80211530)
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研究分担者 |
浦野 健 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (70293701)
古川 圭子 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (50260732)
田島 織絵 中部大学, 生命健康科学部, 講師 (10362237)
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キーワード | ノックアウト / スフィンゴ糖脂質 / 神経変性 / ガングリオシド / ニューロン / グリア / 補体 / ラフト |
研究概要 |
本年は、糖脂質糖鎖のノックアウト(KO)マウス間の異常表現型の比較により、代償機能と独自機能の解明を進めた。b-系列ガングリオシドを欠損するGD3合成酵素遺伝子KOマウスは、舌下神経切断実験において著明な再生能低下を示したが、GM2/GD2合成酵素遺伝子のKOマウスでは、再性能がさらに低下し、野生型のそれの約3分の1以下であることが判明した。またGT1bの切断部への注入により80%まで回復した。そのメカニズムの解明のため、舌下神経核において野生型に比してGM2/GD2合成酵素遺伝子のKOマウスで発現低下する遺伝子を、Iaser capture microdissection(LCM)およびreal time RT-PCRにより解析した。その結果、BDNF、GDNF、p75NTF、TrkB、CNTFRなどの遺伝子発現が有意に低下していることが示され、再性能の低下の要因と考えられた。これらの因子や受容体は以前の研究で、神経再生に重要であることが報告されている遺伝子である。これらの結果は、asialo-系列の欠損に対してはGD3の代償機能が十分でないことを示すものである。一方、GM2/GP2合成酵素とGD3合成酵素のダブルKOマウスにおける遺伝子プロファイリングの研究の推進により、野生型マウスに比してダブルKOマウス脳で発現が亢進または低下する遺伝子の本来の機能と変性との関わりを解析した。炎症関連、神経変性関連、タンパク分解関連などの遺伝子に変化が著明で、特に炎症関連の分子の中で補体とその受容体の発現亢進が特徴的であった。補体制御因子の障害が補体活性化を惹起したことが契機となって早期に炎症プロセスが進行することが変性の要因となっていることが示唆された。実際、TNF alpha、IL-6、interferon gammaなどの炎症性サイトカインの発現が早期より亢進していることが確認された。
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