領域クロマチンの状態から個々の遺伝子特異的な制御までを、試験管内培養系において短時間に再現できる、抗体H鎖遺伝子定常部のクラススイッチ組換えを対象とした実験を主として行った。一般的なクロマチン構造の開放状態を示す、クロマチンヒストンのアセチル化の程度を、標的遺伝子領域クロマチン開放化の指標として用い、標的領域クロマチンが組換えに際して開放化されることを確認した。 一般に標的遺伝子特異的に組換えに先だって起こる、非組換え型転写が、単ヒクロマチン構造開放化の結果に過ぎないのではなく、組換え対象の遺伝子を標的化することに直接的に関与していることを検証できた。すなわち、非組換え型転写の抑制信号を与えつつDHACを阻害することによってヒストンのアセチル化を維持し、標的クロマチンのを開放状態に維持したところ、直接当該遺伝子を標的化することはできなかった。従って、標的遺伝子が転写されることが標的化に必須であるとの結果を得た。この結果は、HATやHDACは基礎となるクロマチン領域の状態を制御し、その開放状態の維持や閉鎖状態の固定化に関与するのであって、転写と共役するする何らかの因子が、当該遺伝子を標的化していることを意味している。 さらに、CpG配列を含むオリゴヌクレオチドが、IgG1とIgEへのクラススイッチ組換えを、非組換え型転写の制御を介して特異的に抑制することを見出し、その分子機構を関与が想定できる転写制御因子の遺伝子破壊マウス由来Bリンパ球を用いて解析した。その結果、この抑制にはそれぞれE2A、STAT6を抑制するId2、Bcl6は関与しておらず、NFkBとIRF4の活性抑制を介していることが見出された。
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