研究概要 |
Pot1のN末端側182アミノ酸残基がテロメア1本鎖DNA領域との特異的な結合に必要なドメイン(DBD)であることを既に明らかにしており、大腸菌内での大量発現系を用いたPot1DBDの調製方法についても既に確立していた。この系を用いてPot1DBDを調製し、Pot1DBDの円偏光二色性(CD)スペクトルを20mM Tris-HCl(pH7.5),150mM NaCl,1mM DTT中で室温付近において測定したところ、Pot1DBDがαヘリックスとβシート構造を有することが明らかとなった。さらに、Pot1DBDの3次元構造を詳細に解析したところ、3本のαヘリックスと8本のβストランドを有することが明らかとなった。また、Pot1DBDの3次元構造はOB (oligonucleotide/oligosaccharide binding) foldのファミリーに属することも明らかとなった。 Pot1DBDとの結合に必要であるテロメア1本鎖DNA側の塩基を明らかにするために、長さおよび塩基配列の異なる一連の変異型テロメア1本鎖DNAのオリゴヌクレオチドをDNA合成機で合成し、逆相HPLCで精製した。これらの変異型テロメア1本鎖DNAと野生型Pot1DBDとの結合能をゲルシフト法で解析した。d(GGTTAC)がPot1DBDとの特異的な結合に必要である、テロメア1本鎖DNA側の最適な塩基配列であることを明らかにした。6塩基いずれについても他の塩基に置換するとPot1DBDとの結合能が極端に低下した。 two-hybrid法により、Pot1とテロメラーゼとの相互作用は直接的な結合によるものでないことを示唆する結果が得られてきた。また、Pot1のC末端領域をbaitとしてcDNAライブラリーの発現産物をtwo-hybrid法でスクリーニングしたところ、Pot1のC末端領域と相互作用する蛋白質としてsnoRNPの1つであるGAR1が分離されてきた。これらより、Pot1はテロメラーゼと直接的に結合するのではなく、GAR1を介してテロメラーゼと間接的に結合するということが明らかとなってきた。
|