研究概要 |
細胞固有のクロマチン情報が、細胞複製過程を通じて維持される仕組み(クロマチン複製)の理解を目的とした研究課題である。 CAF-1は酵母からヒトに至る広汎な生物種で保存されたヒストン結合蛋白複合体で、複製DNAのヌクレオソームへの変換をin vitroにおいて促進する因子である。CAF-1のシロイヌナズナホモログ変異株(fas)の解析を行い、fas変異体で、染色体上の様々な領域に存在する遺伝視座のジーンサイレンシングの脱抑制が、低頻度かつ確率的に(stochastic)起こることを証明した。この結果は、CAF-1の機能が阻害されると、個体内の細胞増殖過程における遺伝子発現情報の安定的な維持が阻害されるという、我々が提唱しているモデル(Cell,2001)を指示するものであった(Ono et al., submitted)。 さらに、宮崎医大の中山教授らとともに、DT40ニワトリ細胞の系を用いて、CAF-1のコンディショナルノックアウト細胞の解析を行い、CAF-1の機能が欠損すると、複製直後のDNAがMNaseに対して顕著に高感受性になることを観察した。この実験データは、CAF-1が、生細胞においても、DNA複製に伴うヌクレオソーム形成に関与することを示す初めての直接的な実験証拠であり、意義が高い(Takami et al., under revision in MCB)。 一方、ヒストンH2Aのバリアントで、不活型クロマチンに局在することが知られているmacroH2Aがモノユビキチン化修飾をうけることを証明し、その修飾部位も同定した(Ogawa et al., In preparation)。その意義など研究の発展が興味深い。
|