研究概要 |
細胞固有のエピジェネティックなクロマチンの修飾情報が、細胞複製過程を通じて維持される仕組み(クロマチン複製)の理解を目的とした研究課題である。以下、三年間の成果を概略する。 (1)DNA複製に連鎖するヌクレオソーム形成に関るCAF-1のシロイヌナズナホモログ変異株(fas)の解析を行い、fa5変異体で、染色体上の様々な領域に存在する遺伝子座のジーンサイレンシングの脱抑制が、低頻度かつ確率的に起こる実験的根拠を提示した。これは、CAF-1及びDNA複製に連鎖するヌクレオソーム形成が、個体内の細胞増殖過程における遺伝子発現情報の安定的な維持に貢献するという我々が提唱したモデル(Cell,2001)を支持するものであった(Genes Dev, 2004 ; Genes Cells, 2006)。 (2)さらに、ニワトリDT40ニワトリ細胞の系を用いて、CAF-1及のコンディショナルノックアウト細胞株の解析を行い、CAF-1が生細胞においても、DNA複製に伴うヌクレオソーム形成に関与することを示すとともに、CAF-1がDNA損傷修復経路或は、チェックポイント経路に関与する新たな知見を得つつある(Takami et al., Mol. Biol. Cell, 2007)。 一方、DDM1はSWI/SNF型のATPase依存型のリモデリング因子で、この因子が欠損するArabidopsis或はマウス個体では、ゲノム全般に渡るDNAのメチル化の低下が観察される。我々は、このDDM1を介したDNAメチレ化維持機構を解明すべく、ヒトpre-B細胞Nalm6細胞において、ヒトDDM1の遺伝子欠損細胞株の樹立に成功し、DDM1の細胞レベルでの機能の解析系を立ち上げた。今後解析の進展が期待できる。
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