研究概要 |
種々の成長因子やインスリンなどのホルモン刺激はPI3Kを活性化させる。PI3Kはリン脂質であるホスホイノシチド-4,5-2燐酸(PIP2)をホスホイノシチド-3,4,5-3燐酸(PIP3)に変換し、PIP3はAktを活性化させることによって細胞増殖、アポトーシス抵抗性、細胞遊走能亢進に働く。PTENはPIP3を主な基質とするホスファターゼでこの経路を負に制御する癌抑制遺伝子である。 我々はPTENの生体における機能を解析するために、平成16年度は肝細胞、血管内皮細胞、前立腺上皮特異的にPTENを欠損させ、その機能を解析した。 肝臓特異的にPTENを欠損させたマウスは、全例生後早期から脂肪肝〜非アルコール性脂肪性肝炎を呈し、その後高率に肝癌を発症した。また、さらにインスリン感受性が亢進し血糖が低下していた(JCI、2005)。 血管内皮細胞特異的のPTENをヘテロ変異させると、血管成長因子に対する血管新生能や腫瘍血管薪生が亢進し、また腫瘍の増殖速度も亢進していた。ホモ欠損させると、壁細胞の集積不全のために、血管のリモデリング障害をきたし、出血をきたして胎生中期に死亡することを見出した(投稿中)。 また、前立腺上皮特異的にPTENを欠損させると、生後早期に前立腺癌を発症することを見出した(PNAS,2005)。 さらにNKT細胞特異的にPTENを欠損させるとNKT細胞の分化が障害され、成熟したNKT細胞が著しく減少することを見出した。
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