研究課題/領域番号 |
16390091
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 寿郎 東京大学, 先端科学技術研究センター・科学技術新興特任教員(特任教授) (80323020)
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研究分担者 |
田中 十志也 東京大学, 先端科学技術研究センター, 産学官連携研究員・特任助教授 (20396930)
馬郡 健太 東京大学, 先端科学技術研究センター, 産学官連携研究員・特任研究員 (90361683)
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キーワード | LRP5 / Wnt signal / insulin / islet / obesity / PDX-1 / SOX6 / very low-density lipoprotein |
研究概要 |
1.膵臓のラ氏島はインスリンを分泌する量をダイナミックに変化させることで肥満・インスリン抵抗性に対して代償を行う。これは膵β細胞の代償的過形成、あるいはβ細胞適応とよばれる。この破綻は2型糖尿病にいたる。私たちは、膵β細胞をモデルにWntシグナルや転写因子の寄与を解明した。高脂肪食にて肥満・インスリン抵抗性を誘導したマウスの肥大した膵ラ氏島と普通食のマウスのラ氏島からRNAを抽出し、網羅的解析を行ったところ2個の転写因子が増加、14の転写因子の発現は低下していた。これら全てをMIN6インスリン分泌細胞にレトロウィルスで感染させ機能を解析したところ、その中の一つSOX6がインスリン分泌を減少させ、かつ、細胞の増殖を抑制することを見いだした。この機構として膵β細胞の分化・維持に重要な転写因子PDX1と直接結合し転写を抑制することが明となった。さらにはWnt・βカテニンシグナルのβカテニンと結合し、Wntシグナルを抑制することでサイクリンDやEの転写を抑制し細胞増殖を抑制する機序も明らかにされた。 さらに、高脂肪食負荷マウスの膵ラ氏島ではWnt・βカテニンシグナルのβカテニンの核移行が亢進していることを明らかとした。これらのことはインスリン抵抗性でのβ細胞の抵抗に関与していることを示した。 2.膵β細胞はインスリン分泌を出す重要な内分泌器官である。私たちは、単離ラ氏島に種々の臓器の抽出液、また300に及ぶ天然化合物をラ氏島に処理することによってインスリン分泌を誘導する物質のスクリーニングを行った。この結果、ヘッジホッグシグナルを抑制するシクロパミンやU18666Aなどの物質が膵ラ氏島でインスリン分泌を促進することを発見した。
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