研究課題/領域番号 |
16390098
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研究機関 | (財)岐阜県国際バイオ研究所 |
研究代表者 |
野澤 義則 (財)岐阜県国際バイオ研究所, 環境応答機能研究部, 部長 (10021362)
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研究分担者 |
赤尾 幸博 (財)岐阜県国際バイオ研究所, 遺伝子診断研究部, 部長 (00222505)
坂野 喜子 岐阜大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50116852)
大口 健司 (財)岐阜県国際バイオ研究所, 健康有用物質研究部, 主任研究員 (80359257)
中川 義仁 (財)岐阜県国際バイオ研究所, 遺伝子診断研究部, 研究員 (60372108)
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キーワード | シグナル伝達 / 酸化ストレス / 脂質 / ホスホリパーゼD |
研究概要 |
過酸化水素(H_2O_2)刺激による酸化ストレスによってホスホリパーゼD(PLD)、PI3キナーゼ(PI3K)が活性化され、PLDが酸化ストレスの初期応答における複雑な脂質シグナル伝達経路の相互連係、すなわち脂質シグナリングネットワークの中心的な役割を果たしていることが示唆されているが、その詳細な調節機構については十分明らかでない。今年度は、神経系のモデル細胞であるPC12細胞を用いて酸化ストレスによる生存シグナル系(PI3K/Akt)の活性化におけるPLDの関与について検討した。PC12細胞はvanadate存在下でH_2O_2を作用させるとPLDの活性化や各種シグナル酵素の強いリン酸化が認められた。H_2O_2によるPyk2のSrc依存性チロシンリン酸化が不活性型PLD2KRの導入およびPLD阻害剤である1-butanolにより抑制されることから、Pyk2の活性化にPLD2の関与が示唆された。さらに、H_2O_2によるPI3K/Akt/p70S6Kの活性化も1-butanolやPLD2KRおよびドミナントネガチブPyk2DNの導入により抑制された。一方、ERKの活性はEGFレセプターのトランスアクチベーションを介して活性化されるが、PLDs阻害剤により影響されなかった。また、PLD2はSrcやPyk2に結合し、PLD2活性化が活性型SrcとPyk2の複合体形成を促進することによりPyk2の活性調節に関与することが示された。以上の結果から、PC12細胞では酸化ストレスによる生存シグナル系PI3K/Akt/p70S6Kの活性化にPLD2がPyk2/Srcの活性化を介して作用していることを明らかにした。 スフィンゴシンキナーゼ(SPHK)もアポトーシス抑制に関与することが知られているが、PC12細胞の酸化ストレスに対しては顕著なSPHK活性変化は認められなかった。一方、抗がん剤による細胞死に抵抗性を示すヒト前立腺PC3細胞では、抗がん剤カンプトテシン処理によりSPHK1活性の増加が認められ、薬剤耐性とSPHK1の関連性が示唆された。
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