研究概要 |
平成16年度は各種発現ベクターを用いた遺伝子安定発現細胞作製技術および体細胞遺伝子相同組み換え技術等の各種細胞株への適用を念頭においた検討と癌細胞の発生、増殖等にかかわる癌関連分子(標的分子)の探索を重点的に行った。 1)癌細胞株(呼吸器・消化器癌中心)を用いた解析: ・ヒト癌細胞株の収集、それらの細胞生物学的および遺伝学的backgroundの確認、各株での各種発現ベクターを用いた遺伝子導入条件の検討をおこなった。 ・各癌細胞株につき公的データベースおよび誌上発表された発現情報解析データの収集、検討を行った。 ・遺伝子変異解析、cDNAマイクロアレイによる遺伝子発現プロファイル解析や各種プロテオミクス解析に必要な試料(DNA,RNA,蛋白)の抽出とプローブ作製をおこなった。 2)高頻度に癌で異常を示し癌細胞増殖の促進あるいは抑制に関わる、すなわち新規薬剤同定法や治療法開発のためのモデルとなる標的分子の探索: ・candidate approachの一環として、癌抑制遺伝子DEC1およびp300につきその遺伝子発現と細胞表現型(増殖、細胞死、下流シグナルの誘導等)の関係につき検討した。DEC1遺伝子はリポフェクション法による食道癌細胞株への遺伝子導入実験によりその増殖を抑制することを確認した。p300遺伝子は試験的に作製した体細胞遺伝子相同組み換え株(大腸癌細胞株でp300の片アレルを欠損させることによりnull株を作製)において、DNAダメージによりアポトーシスが誘導されることを確認した。この機序の一部としてp300がp53とその下流遺伝子の機能を各種の蛋白修飾や発現制御で調節することを明らかにした。
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