研究概要 |
1.大阪リンパ腫研究会への症例登録は約2650例となっており、本邦の悪性リンパ腫研究のためデータソースとして充分な数に達している。内訳は非ホジキンリンパ腫が約10%である。非ホジキン腫のうち、B細胞性が76%、T, NK細胞性が24%である。 2.上述の症例を用いて、かねてより我が国に多いと言われてきたNK細胞腫瘍の頻度を計算したところ、全リンパ腫中の3%を含めることが判明した。NK細胞腫瘍の内訳をみるとリンパ節原発が11%、他はリンパ節外原発である。とりわけ鼻腔を中心とする上気道原発が全体の60%と最も頻度が高かった。従来よりNK細胞腫瘍と蚊アレルギーの関係が注目されてきたが、本調査では2.5%の症例にみとめられるのみであった。 3.慢性リュウマチ患者(RA)からは悪性リンパ腫が多く発生すると考えられてきた。又、近年リュウマチ治療への使用が一般化してきたメトトレキセート(MTX)がリンパ腫発生を促進しているとの説も出されている。これらの点を明らかにするために症例・対照研究が進行中である。尚、最近RA治療薬であるinfliximab投与中に発生した悪性リンパ腫症例を報告した(Int J Hematol,2005)。 4.膿胸関連リンパ腫(PAL)はEBウィルス関連リンパ腫の1つである。EBウィルス潜伏感染遺伝子の1つであるEBNA-2の発現が患者予後と関連していることを示した。具体的には、EBNA-2発現PALは非発現のものに比べて予後が不良である。PALの予後因子を明らかにした意義があると同時に潜伏感染遺伝子発現パターンが予後と関連することを示した最初の文献上の記載となるものである(Int J Cancer, in press)。 5.特異な環境下において発生するPALにおいてはB, T細胞性のgenotypeを示すものがあることを報告した(Virch Arch 2005)。 6.B細胞の分化因子であるBACH2発現がdiffuse large B-cell typeの予後に関連することを示した(J Clin Oncol 2005)。
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