研究概要 |
臨床的な背景がよく検討されている胃MALTリンパ腫例について、以下の検索を行った。対象症例は、全体で76例である。連続的な症例は74例で、このうち61例(82%)は、除菌に反応し寛解が得られた。除菌抵抗性であった13例中5例はH.pylori陰性であり、H.pylori陽性例に限ると寛解率は88%であった。寛解までの平均期間は平均6.5ヶ月、観察期間の平均は27ヶ月である。寛解率は、申請時preliminaryなデータが確認され、欧米のそれより高率で、国内主要施設とはほほぼ同等で、わが国においてはH.pyloriの関係する症例の割合が高いことが判明した。t(11;18)は全体で32例を検索し、陽性7例、陰性25例であった。陰性例25例のなかで除菌抵抗例は8例であった。これらのデータの一部は文献報告(胃と腸、日本消化器内視鏡学会雑誌など)を行った。また、これから派生して従来から追究しているHSP60について抗体価が除菌反応性と関係していることを見出し、文献報告した。SHP1については、検索したところ、除菌反応性の一部では陽性、除菌抵抗性では陰性であり、現在メチル化の有無について検索中である。マイクロアレイについては、条件ぎめの段階で検討を要する点があり、次年度にかけて検討することとなった。今年度は、このほか、アポトーシスや細胞増殖能について検索しており、MIB-1 index, p53,p27等について除菌反応性、高悪性度化との関係を追及し高悪性度化とこれらの諸因子との関連を見出したが、t(11;18)陽性陰性例との間には相関関係を見出すことはできなかった。これは論文準備中である。また、HSP60の関係する分子機構、他臓器のMALTリンパ腫例も平行して研究し、文献報告を行った。
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