研究概要 |
胃MALTリンパ腫とびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)について、昨年度の研究に引き続いて以下の検索を行った。対象症例は、既報告に扱った症例がほとんどであり、臨床的な背景が十分に検索された症例である。23例のMALTリンパ腫例、5例のDLBCL、4例のDLBCLとMALTリンパ腫並存例を検索した。P27,P53,Ki-67を免疫組織学的に検索したところ、MALTリンパ腫例は全例p27陽性、p53陰性、Ki-67低陽性率であった。DLBCL単独例はp27陰性、p53陽性、Ki-67高率陽性であった。一方、DLBCL、MALTリンパ腫並存例ではどちらの成分もp27陰性であったが、DLBCLの成分はp53陽性でKi-67も高率に陽性であった。これらのMALTリンパ腫の抗原発現性はDLBCLのないMALTリンパ腫例と同様であった。これらの結果は高悪性度化にp27の消失が関わっている可能性を示唆するものであり、除菌抵抗性には高悪性度化が関係している可能性があるので、興味ある結果と考えられた。学会発表するとともに論文発表を行った。また、昨年見出した除菌との関係:除菌により寛解した症例ではSHP-1などのメチル化が明らかに減少したのに対して、除菌抵抗例ではメチル化が持続したという所見。さらに、各種ガン関連抑制遺伝子としてp15,p16,p73,DAPK,hMLH-1,MGMT,MINT1,MINT2,MINT3,HCADの10遺伝子のpromoter CpG island領域のメチル化について解析し、H.pyloriの感染がメチル化を誘導し、それによるMALTリンパ腫を引き起こすことに関係した知見は、MALTリンパ腫の発癌初期課程を検索できる可能性があり、特許申請を行った。
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