研究概要 |
形質細胞様樹状細胞(Plasmacytoid dendritic cells : PDC)はウイルス感染により多量のI型インターフェロン(IFN)を産生することが知られる。通常のDCは生体内に広く分布し、末梢組織から所属リンパ器官へと移動するが、PDCは主にリンパ系組織に分布し、しかも、炎症部位やリンパ組織に血行性に遊走する。しかし、その骨髄幹細胞からの分化については明らかではない。新たに同定されたLy49Q分子はNK受容体に属する分子であるが、NK細胞には発現されておらず、Gr-1陽性の骨髄系細胞に発現されていた。しかも末梢のB220+ CD11low Gr-1+として同定されるPDCも抗Ly49Q特異抗体により陽性であり、PDC特異的抗体とされるPDCA-1陽性細胞とLy49Q陽性細胞が完全に同一の細胞であることも確認された。しかし、骨髄中においては、B220+ CD11low Gr-1+ PDCA-1+ PDCは必ずしも全てがLy49Q陽性ではないことが示された。そこで、先ずLy49Qの発現を指標にそれぞれの画分の細胞についてCD4,CD8の発現をFACSにより解析したところ、Ly49Qの発現上昇に伴いCD4の発現レベルも高くなることが示され、この画分の細胞の表現型は末梢リンパ系器官内PDCに酷似していた。次に、骨髄中のPDCをLy49Q陽性と陰性細胞に分画して、それぞれの表現型の変化と機能の差異を検討した。その結果、Ly49Q-細胞は細胞分裂することなくLy49Qを発現するようになること、また、CpG-ODN刺激によりLy49Qと共にMHCクラスII分子や補助刺激分子の発現を増強し、樹状細胞用の形態をもつ細胞へと変化した。さらに、CpG-ODNやHVJで刺激したところ、Ly49Q-細胞はLy49Q+細胞と同程度のTNF-aを産生するにもかかわらず、IL-6,IL-12,IFNの産生は著明に低下していた。一方、TLR2リガンド(Pam3CSK4)での刺激に対しては、Ly49Q+細胞のみがTNF-aを産生することも示された。ところが、CpG-ODN存在下でのT細胞活性化能においてはLy49Q-細胞の方が強力であり、活性化されたT細胞はIL-10を産生していた。以上の結果より、Ly49Q分子の発現はPDCの分化・成熟を同定する上で有効な指標となることに加え、PDCはT細胞活性化においては抑制性細胞を誘導することが示された。
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