研究課題/領域番号 |
16390121
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
樋野 興夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (90127910)
|
研究分担者 |
藤井 博昭 順天堂大学, 医学部, 講師 (50296836)
松岡 周二 順天堂大学, 医学部, 助手 (20286743)
梶野 一徳 順天堂大学, 医学部, 助手 (80260066)
|
キーワード | 肝発がん / 慢性肝炎 / 高がん化状態 / dhpA / 肝がん / HBV / HCV |
研究概要 |
本年度はY box binding Protein (Cold shock protein) familyに属するdbpAが、肝発がん過程を促進する宿主側の因子として働いているかどうかの検証を中心に進めた。 1)in vivoでのdbpAの発がん過程の関与を見るために肝臓でdbpを特異的に発現するトランスジェニック(Tg)マウス(C57BL/6系)を作製し、肝発がん感受性の変化を調べた。自然経過では、異なる2つのラインにおいて、5/35および1/28の頻度で肝腫瘍の発生を認めた。次いで、化学発がん剤により生じる肝発がん過程が、Tgマウスで促進されるかどうかを調べた。生後14日でdiethylnitrosoamine(DEN) 20mg/kgを投与し、30週齢で肝表面の腫瘍数を肉眼的に観察した。雄では、Tg(+)群で3.89±3.02個、Tg(-)群で2.00±1.63個の肝腫瘍が認められ、Tg(+)(-)群間で有意差を認めた。 2)肝発がん感受性の亢進を示すdbpA Tgマウスにおいて、肝臓に形態的変化の見られない30週齢で発現の亢進している遺伝子群をDNAチップで解析した。その結果、Tg(+)マウスで発現の亢進している遺伝子として、insulin-like growth factor binding Protein 1(lgfbp 1)等の増殖関連遺伝子が残り、また発現の低下している遺伝子として4種の遺伝子が残り、現在それらの遺伝子と肝発がん過程との関連を調べている。 3)ヒト肝がんにおけるdbpAの発現状態を調べた。dbpAの発現している肝がんでは、組織学的に未分化な症例例、門脈浸潤例、ステージの進行例が多く、また、特にdpbAが核で発現している症例では、手術後3年間における無再発生存率が有意に低かった。以上の結果より、dbpAが、肝がん症例の予後マーカーとなり得ることが示された。また、dbpAが肝発がん過程の進行モーメントとして働いている可能性も示唆された。
|