研究概要 |
本研究では遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の原因分子であるミスマッチ修復タンパク質MLH1およびPMS2が、DNA損傷のシグナル伝達においてどのような機能を持つのかを明らかにすることを目標とした。代表者はすでにPMS2とアポトーシス誘導能をもつp73が結合することを報告しているが、本研究によりMLH1-PMS2-p73は3量体を形成せず、MLH1-PMS2複合体、p73-PMS2複合体はそれぞれ存在することを示した。また、PMS2のコドン500-707がp73との結合部位であることを明らかとし、MLH1との結合部位であるコドン675-850に近接することから、この二つの複合体が競合的に存在することが示唆された。しかし、MLH1はDNA損傷後のp73依存性アポトーシス誘導に必要とする報告があり、MLH1はPMS2-p73複合体形成を促進するか、阻害するかが問題となった。MLH1はPMS2と結合して安定な複合体を形成することが知られ、HNPCC患者で報告されたMLH1の変異によりPMS2は安定化されず、結果的にPMS2-p73の結合体も減少することが予想された。そこで、変異型MLH1が共存するときのPMS2-p73複合体量を比較すると、I25F, P28L, G62K, N64SなどのMLH1のATP結合部位付近の変異はPMS2-p73の複合体形成を促進し、E587G, K618T, R659P, A681T, W714Xなどの変異は減少させることが判明した。HNPCCで報告されたMLH1の変異により、ミスマッチ修復機能とアポトーシス誘導機能がどのように阻害されるかと検出する目的で101種類のMLH1のミスセンス変異を作製し、酵母を用いた機能解析と生化学的なミスマッチ修復能解析し、一部の変異に対し一過性に過剰発現しシスプラチンによる損傷を加えた時のアポトーシス誘導を解析した。
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