研究課題
基盤研究(B)
抗リン脂質抗体が胎盤血栓から不育症に至る際にまずはじめに起こるのが補体活性化であることはほぼコンセンサスを得ている。従来、抗リン脂質抗体の抗原とされてきたβ2グリコプロテインI自体に補体活性化活性のあることを、ウサギ血球を用いた溶血実験によって見出した。次に、着床期の細胞外マトリックス(ECM)構築変化機構についてマウスを用いた研究を進めた。ECMを分解する担い手とされるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のメンバーであるMMP9の活性が着床期前に上昇することを見出し、それが精漿に誘導された白血球によってもたらされることをin situ zymographyや免疫組織化学、精管結紮雄マウス、精嚢切除雄マウス、RB6-8C5抗顆粒球抗体を用いた白血球減少雌マウスなどを用いて明らかにした。不妊治療における精漿の意義にも繋がる研究成果である。また、マウスcytotoxic T lymphocyte associated protein-2α : CTLA-2αは、全身の組織でmRNAの発現が観察されるが、そのタンパクは雌雄生殖器や胎盤において顕著に発現する。そこで、着床および妊娠維持に関与するタンパクとしてCTLA-2αに着目し、マウスを用いてmRNAとタンパク発現を調べたところ、mRNAは非妊娠子宮の管腔上皮、妊娠初期の子宮の子宮内膜間質細胞、妊娠中期の母体胎盤(間膜腺と脱落膜)、胎盤迷路部および胎子において広範囲に発現が観察された。しかし、タンパクは非妊娠子宮の管腔上皮、妊振初期の子宮の子宮内膜間質細胞、妊娠中期の母体胎盤のみで発現が見られた。さらに、エストロゲン、プロゲステロンそれぞれのアンタゴニストをマウスに投与した実験から、子宮におけるCTLA-2αは上皮に発現するものはエストロゲンの、内膜間質細胞に発現するものはプロゲステロンの制御を受けていることが示唆された。
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American Journal of Reproductive Immunology 51(3)
ページ: 204-210
Biology of Reproduction (印刷中)