マラリア伝搬阻止ワクチンは、それ単独でマラリアの流行を抑制できるのみならず、現在開発中の他種のマラリアワクチン及び治療薬に対する新たな耐性原虫の拡散を阻止できる点で、カクテルマラリアワクチンの必須の構成成分と考えられている。ところが、熱帯熱マラリア伝搬阻止ワクチン候補として研究が進められている抗原は現在までわずかに4種類であり、未だ実用化に至ったワクチンは無い。一方、熱帯熱マラリア原虫のゲノム情報が2002年に公開され、生殖母体期に特異的に発現するタンパク質の中に新たな伝搬阻止ワクチン候補抗原が含まれていると予想されている。しかし、既存の方法では熱帯熱マラリア原虫タンパク質のゲノムワイドな発現は困難であった。本研究は、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系でゲノムワイドに発現した生殖母体期の組換えタンパク質と生殖母体特異的な単クローン抗体とを用いて、新規の伝搬阻止ワクチン抗原を同定することを目的に実施した。 1.平成16年度に熱帯熱マラリア原虫生殖母体に特異的に発現していることが予想されている遺伝子を約190種類クローニングした。このうち、昨年度及び今年度に合計120種類の分子を組換えタンパク質として発現することに成功し、その大部分は可溶性画分に発現されていた。 2.酵素抗体法にて熱帯熱マラリア原虫生殖母体に対する単クローン抗体と反応の見られた生殖母体タンパク質のうち、1種類をコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて大量合成し、マウスに免疫して抗血清を得た。この抗血清を用いた間接蛍光抗体法により、熱帯熱マラリア原虫生殖母体における発現及び局在を検討した結果、生殖母体表面に発現していることが明らかとなり、この分子は新規の熱帯熱マラリア伝搬阻止ワクチン候補抗原と考えられた。
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