マラリア原虫の赤血球侵入型であるメロゾイトの先端部小器官の一つロプトリーに局在するRhopH複合体は、その遺伝子座を破壊した原虫は作製できないことから、原虫の生存に必須の蛋白質であると考えられている。我々は、これまでにRhopH複合体が赤血球への結合能を有することを明らかにしたが、その分子機構の解明は進んでいない。そこで、本研究では、部分的なRhopH複合体の組換え蛋白質を発現させた熱帯熱マラリア原虫を遺伝子導入により作成し、これらの遺伝子導入マラリア原虫で発現した組換え部分RhopH複合体蛋白質の赤血球への結合能を検討することで、熱帯熱マラリア原虫のRhopH複合体の赤血球結合ドメインの同定をおこなう。 昨年度までにGFPのみ、GFPと融合したRhopH1の最初の1/3、2/3および全長をロプトリー蛋白プロモーターで発現するコンストラクトによる安定的遺伝子導入熱帯熱マラリア原虫の作成に成功した。ところが、蛋白質の発現を検討したところ、GFPのみおよび最初の1/3とGFPの融合蛋白質を発現する原虫では組換え蛋白質の発現が見られたが、2/3および全長では組換え蛋白質での発現が認められなかった。発現が見られた2種の遺伝子導入マラリア原虫では、メロゾイトの先端部に局在が認められた。興味深いことに、ロプトリー蛋白質のプロモーターとロプトリー蛋白質のシグナル配列から発現されたGFPは、種々の細胞内小器官があるにもかかわらずロプトリーに局在した。最初の1/3とGFPとの融合蛋白質もロプトリーに局在した。RhopH2に対する抗体を用いた免疫沈降法では、最初の1/3とGFPとの融合蛋白質は共同沈降せず、最初の1/3が複合体形成に寄与していない可能性が示唆された。また、予備的な結果では、最初の1/3の部位には赤血球結合能が見られなかった。
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