研究課題
基盤研究(B)
腸管出血性大腸菌(EHEC)は、小児や高齢者に感染すると重症合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)を惹起し、予後不良となる。従来、HUSの発症にはEHECがもつタイプIII分泌システムが必須であると考えられてきた。しかし血清型O86大腸菌による家族感染例では、当該血清型O86菌がタイプIII分泌システムをもたないのに小児がHUSを発症して死亡した。本研究では、小児株(新型EHEC)の遺伝学的特徴を明らかにした。小児株は長さ120.730kbの分散型粘着性プラスミッドpO86Aをもっていた。pO86A上には分散型粘着因子遺伝子(hdaA, HUS-associated diffuse adherence A)が存在し、18.0kDa(計算上15.5kDa)の外膜蛋白HdaAをコードした。HdaAはマンノース耐性のヘマグルチニン活性(MRHAO86)を示す、新しい粘着因子であった。pO86Aにはさらに、赤痢菌(S.flexneri)に99%の相同性を示すIgA1プロテアーゼ遺伝子ipd(IgA1 protease of diffusely-adhering enterohemorrhagic E.coli)が存在した。小児株が溶原化していた志賀毒素(Stx2)ファージは、サイズは60.238kbで、血清型O157EHECのStx2ファージに類似したが、挿入配列(att)はO86独自の配列であった。したがって、当該家族感染例では「小児腸管内で、O86型Stx2ファージが高定着性O86大腸菌に溶原化し、新しいEHECが出現、致命的なHUSが惹起された」可能性が高い。また、HUS発症にタイプIII分泌システムが必須でないことが示唆された。さらに、生薬アニソダミンや抗菌薬アジスロマイシンが抗Stx作用を示すことを確認した。作用点はNF-kBより上流のシグナル伝達系であると考えられた。
すべて 2006 2005
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