MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)、緑膿菌、肺炎桿菌などの多剤耐性菌が臨床現場で重大な問題になっている。これらの菌の多剤耐性に最も深く関与している多剤排出ポンプについて系統的解析を進めた。特に、ゲノムシーケンスが利用できるMRSA N315株については、ゲノムシーケンスから推定された37個の多剤排出ポンプ遺伝子すべをクローニングし、それらの性質を明らかにした。また発現状況をしらべ、耐性菌と感受性菌において発現に差があるもの、すなわち多剤耐性化に寄与している多剤排出ポンプを明らかにした。このようにしてMRSAについて多剤排出ポンプの全体像を明らかにした。緑膿菌についても、最も活性の強いRND型の多剤排出ポンプについて全てクローニングし性質を明らかにした。また、耐性変異株から発現上昇している多剤排出ポンプを同定、解析し、多剤耐性化に深く関与する排出ポンプを同定した。肺炎桿菌、VREについてもゲノムシーケンスから推定される各30個程度の多剤排出ポンプのうち、それぞれの菌の主要なものについて遺伝子クローニングと解析を行った。腸炎ビブリオについても、RND型多剤排出ポンプ全てについて遺伝子クローニングを行い、またそれらの遺伝子破壊株を構築して役割を解析した。 一方、排出ポンプ阻害物質としては、MRSAの多剤排出ポンプNorAを阻害するスカイリンを見いだし、その解析を進めた。また、MRSAのテトラサイクリン排出ポンプ阻害物質バイカレインについても作用の仕方について解析した。さらに、MRSAやVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)に有効な抗菌物質、両菌に対して既存抗菌薬の効力を高める物質などを見いだした。それらの作用機構について解析を進めた。
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