研究概要 |
緑膿菌の多剤耐性のメカニズムのひとつである薬剤排出ポンプ(efflux pump)、およびそのポンプインヒビター(efflux pump inhibitor ; EPI)と組織侵入性への関連性について研究を行った。緑膿菌の組織侵入性がEPIによって影響を受けるかどうかを、MDCK(Madin-Darby canine kidney)細胞モノレイヤーシステムを用いたpenetration assayにて比較検討した。EPIとしては、MC-207,110を使用した。 PAO1WTは感染後3時間以内にMDCK細胞モノレイヤーを通過したのに対し、EPIを添加したWTではEPIの濃度依存性に組織侵入性が有意に低下していた。この現象はnalB(MexAB-OprMポンプ高発現株)においても同様に認めた。しかし、nfxB(MexCD-OprJポンプ高発現株)においては、EPIを添加してもこのような組織侵入性の低下は認めなかった。 以上から組織侵入性に関する因子は主にMexAB-OprMポンプより排出され、それをEPIで阻害することで、組織侵入性が低下することが示唆された。これらの結果は、EPIは単に抗菌薬との共存下で抗菌活性を高めるのみならず、さらに緑膿菌の病原性を抑制する作用も有することを示しており、今後の抗緑膿菌製剤の開発上重要な知見であると考えられる。現在以上のデータを英文原著として専門誌に投稿する準備中である。
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