緑膿菌quorum sensing変異株であるPAO1 lasI欠損株、rhlI欠損株の組織侵入性を、比較検討した。また薬剤排出システム変異株であるmexAB-oprM欠損株の組織侵入性の低下にquorum sensing機構が関与しているか否かについて、合成homoserine lactone (HSL)の添加の組織侵入性に及ぼす影響を比較することで検討を行った。lasI欠損株、rhlI欠損株ではWTと比較しmexAB-oprM欠損株ほどではなかったものの組織侵入性が有意に低下していた。またlasI欠損株にC_<12>-HSLを、rhlI欠損株にC_4-HSLを加えると組織侵入性は回復傾向を示し、とくにrhlI欠損株にC_4-HSLを加えた場合は有意な回復を認めた。しかしmexAB-oprM欠損株にC_<12>-HSL、C_4-HSLを加えても組織侵入性の回復傾向は認めなかった。quorum sensing機構は部分的に緑膿菌の組織侵入性に影響を与えるものの、mexAB-oprM欠損株の組織侵入性低下には、別の因子がより強く関与していると考えられた。これらのデータを専門誌に発表した。また、efflux pump inhibitor (EPI)を添加したWTではEPIの濃度依存性に組織侵入性が有意に低下していた。この現象はnalB (MexAB-OprMポンプ高発現株)においても同様に認めた。以上から組織侵入性に関する因子は主にMexAB-OprMポンプより排出され、それをEPIで阻害することで、組織侵入性が低下することが示唆された。これらの結果は、EPIは単に抗菌薬との共存下で抗菌活性を高めるのみならず、さらに緑膿菌の病原性を抑制する作用も有することを示しており、今後の抗緑膿菌製剤の開発上重要な知見であると考えられる。以上のデータを専門誌に投稿中である。
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