研究概要 |
1.US3欠損ウイルスでは、感染細胞内に検出されるテグメント蛋白質UL46の量が著しく減少しており、粒子内にもほとんど存在していないことが判明した。US3PKはUL46蛋白質を試験管内でリン酸化すること、欠損ウイルス感染細胞ではUL46のリン酸化パターンが野生株のと異なること、またUL46蛋白質が速やかに分解されることがわかった(J Gen Virol,2005)。以上の結果からUS3PKによるリン酸化はUL46の安定化及び粒子内への取り込みに重要であることが示唆された。 2.US3のウエスタン・ブロット法による検出パターンがUL13欠損ウイルス感染細胞と野生株感染細胞とでは明らかに異なっており、この移動度の差は、脱リン酸化酵素感受性であった。また、UL13はUS3をin vitroにおいて直接リン酸化することが明らかになった。US3はウイルス粒子の核膜からの出芽を制御するウイルス蛋白質UL34およびUL31の局在を制御していることが報告されている。UL13欠損ウイルス感染細胞におけるUL34およびUL31の局在パターンは、US3欠損ウイルス感染細胞におけるそれと類似していた(J Virol,2006)。以上の結果は、UL13がUS3をリン酸化し、US3の下流で作用するウイルス因子UL34およびUL31の局在を制御している可能性が示唆している。 3.HSV粒子の神経細胞軸索内輸送を評価する動物モデルの検討を行い、鼻腔接種系が様々な利点を有していることがわかった。HSV野生株は3種の経路(嗅受容体・嗅球経路、鋤鼻器官経路(vomeronasal organ)、優位になる経路が異なることがわかった。US3欠損ウイルスは、嗅受容体細胞に著しいアポトーシスを誘導し、嗅球に達することができなかった。
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