研究概要 |
1.UL51を欠損させた変異株FDL51は野生型と比較してウイルス産生量が1/100程度まで低下した。電子顕微鏡観察により、extracellularおよびintercellularの成熟ウイルス粒子数が激減する事が確認されたが、核内のnucleocapsidの形態や数については野生型と同様であった。またFDL51感染細胞では一次エンベロープを被ったカプシドが核膜周縁部に多数観察された。HSV-1 UL51遺伝子産物はカプシド形成以後の粒子成熟過程において重要な役割を担っていることが示された。 2.UL56遺伝子産物がニューロン特異的なキネシンの一つであるKIFIAと相互作用していることを明らかにした。また、UL56とUL11が同一のタンパク質複合体中に存在していることがわかった。UL11はウイルス粒子のegressに関わると言われており、UL56もegressに関わっている可能性が示唆された。 3.US3欠損ウイルスでは、感染細胞内に検出されるテグメント蛋白質UL46の量が著しく減少しており、粒子内にもほとんど存在していないことが判明した。欠損ウイルス感染細胞ではUL46のリン酸化パターンが野生株のと異なること、またUL46蛋白質が速やかに分解されることがわかった。US3PKによるリン酸化はUL46の安定化及び粒子内への取り込みに重要であることが示唆された。 4.中枢神経系への侵襲性を欠くHF10の全塩基配列を決定し、既に報告のあるHSV-1(strain17)と比較した。その結果、UL56(C末端アンカー型type II膜蛋白質)、LAT(Latency-associated transcripts)に加えて、新たにUL43,UL49.5及びUL55の計5種のアクセサリー遺伝子機能の発現が欠損していることが明らかになった。
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